第百十八話 スッキリ。

第百十八話 スッキリ。


11月もあとわずか。
あっという間に年末を迎えそう。

さて、今回の議題は『スッキリ。
どういう結末になるか、書き進めなければわからない。

それではどうぞ。



「気になっていること。」

きっかけは時計修理店。
神田の街を歩いていると、のぼりに書かれた<時計修理・電池交換>の文字が目に飛び込んでくる。いつも何処かで目にするものの、なかなか立ち寄るまでに至らない。かといって、わざわざ持っていくまで必要性も感じていない。しかし、いつも車の中には電池の切れた2本の腕時計がひっそりなりを潜めている。

この2本のカジュアルな時計は、高価なものではないが自分にとっては思い出の逸品。ひとつは初めてスタッフと仕事でロンドンに訪れた記念に、取材した洋服屋さんで買ったもの。もう1本はパリの伝説的なセレクトショップ<collette(コレット)>が2020年に閉店する直前に、なにか軌跡を残さねばという衝動で手に入れた。そんな思い入れのあるものをほったらかしにしていること自体どうかと思うが、そもそも時計をつける習慣もなければ時計にもあまり興味がない。きっと当時の自分は、この大切な時間を記憶として時計に刻み込みたかったのだろうと想像する。ちょっと恥ずかしいけど、結果こうやって振り返れたから良しとしておこう。

そんなこんなで、数年置き去りにされていた時計が復活を遂げる。修理時間はたったの10分。ずっと気になっていたことがいきなり解決される満足感。何もしていないのに得られる達成感に、それはそれは『スッキリ。』のなにものでもない。

他にも、ギコギコ音のする自転車のチェーンに油を注いだり、光沢のない革靴をキレイに磨いたり、身近なところでは忙しくてたまった洗濯物や洗い物をいっぺんに片付けたりと。どこか後ろ髪を引かれる思いの先に『スッキリ。』が待っているはずだ。



「まとめ。」

こういった日常の『スッキリ。』って、どれも正常な状態に戻ったときに生まれる感覚。気になっていることを排除できたときの肩の荷がおりた安心感というか喜びというか。忘れがちだけど、"普通でいられることがいかに幸せか"ということを改めて実感。

格好をつけたり背伸びをしたり、追い求めると苦しくなるからプラスマイナス0がちょうどいい。
なんとなくそう思えた時計修理での一件。

それではまた来週!

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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