第六十一話 ココカラ洋食

第六十一話 ココカラ洋食


ボクは洋食が好きだ。
ハンバーグがあって、ナポリタンがあって、ビーフシチューがあって。
あの昔ながらのジャパニーズ洋食。目についたら、食べてみたい衝動に駆られる。

なぜ故に、これほどまで惹かれるのか。
そのきっかけが先日ついに判明したのだ。
幼少期のちょっとした心理が作用していることもわかった。

それでは、気楽にどうぞ!



「耳鼻科。」

ボクは、小さいころから慢性鼻炎。
月に一度は必ず耳鼻科に通っていた。いつも薬のついた棒を鼻の奥まで入れられ、喉には甘くて苦い薬を塗られいつも大泣きしていた。たしか先生は、若かりし柳生博をもっとカッコ良くスマートにした、欧人のような雰囲気ある人だった。

母は家を出るとき、何処へ行くのか告げることはない。
先に言ったら、きっと駄々をこねてヤダヤダ星人になるからだろう。お出掛けと思いワクワクして車に乗り込むも、途中で耳鼻科と察知する。気持ちの落胆と心の整理がまったくつかない。耳鼻科というムチに対し、アメの存在であったのが、そう、洋食なのだ。

店名は『POPONE/ポポーネ』。
このマジックワードさえ出しておけば、涙ながらもちゃんと治療を受けるのだから、それはそれは便利な言葉と想像するのは容易い。小学校高学年までは行っていたので、それでも40年近くの時間が過ぎている。

最近モノ忘れがひどいけど、昔の記憶だけはハッキリと覚えている。



「思い立ったら。」

「今度、行こうよ!」
よく使う会話のフレーズ。こう言って本当に行くことってどれくらいあるだろう。

父が亡くなってからというもの、姉兄弟3人母のところへ訪れることが多くなり、先日ランチに連れ出すことに。目的地も告げず、高速に乗って30分。かつて住んでいた足立区へ。前日の時点でオープン時間はチェック済み。目指すはもちろん『POPONE/ポポーネ』一択、40年ぶりの訪問だ!



「ポポーネ。」

ドアを開けた瞬間、記憶が蘇える。
オープンして15分と経っていないのに、店内はすでにお客さんで溢れる。残念だが、テーブル席と横のカウンター席に分かれることに。オーダーはもう決まっている。<海老グラタン>と<ミックスピザ>。思い出補正されてるのもあり、言わずもがなそりゃ旨いに決まってる。

かつてのオーナーはもうやめていて、親子でなく引き継ぎ引き継ぎ、現在は三代目のオーナー。メニューが増えているものの、味は継承されていると勝手に思っている。いや、そう思いたい。

週末はなかなか予約しないと入れない人気店のようで、待たずに座れただけでもタイミングが良かったようだ。洋食を好きになったきっかけのお店に、仕掛け人である歳を重ねた母と再び一緒に訪れられたことが喜ばしい。オーナーさんに経緯をお伝えしたら「また、是非いらしてください!」と。お言葉に甘えて、このコラムを読むであろうウチのスタッフを、今度連れて行こうと思う。

あっ、今度じゃない、”必ず”だ!



「まとめ。」

あれやろうこれやろうと思っても、どうしても後回しにしてしまうもの。
いつかのつもりが結局手をつけられず、後悔したり思い残しになるかもしれない。そういうことはできれば少ないほうがイイ。

時間は限られているものだから、思い立ったが吉日。
その日その時を大切に、思いつきをちゃんと回収しながら日々を過ごしていきたいと思う。

気になったことがあったら、”今度”と言わず、予定を入れてみてはいかがでしょう!

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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