第二百四十六話 プライド
毎週日曜日は『じろうの道草』コラムの日
さて今週は、とある日のちょっとした出来事の話
では今週もまいりましょうか
「豪華なお弁当。」
デパートの地下の食品街。
いつも人で賑わっていて、その活気におのずと気分も盛り上がってくる。閉店1時間前ということもあり、割引価格に引き寄せられた人々で通路が埋め尽くされる。そんな中ひときわ元気な声が響き渡る。そこは期間限定で出店している催事の売り場、小気味よい関西弁に思わず足が引き寄せられる。
『こないなええ弁当を最後まで残してしもて、、、ほんま情けないわぁ~』
聞こえるか聞こえないか、独り言のようにポロッと嘆く売り場のおばちゃん。残りもあとわずか、そこには肉盛り盛りの豪華なお弁当だけがおいてきぼり。このひと言にいろんなものが詰まっているようで、せっかくならボクの勝手な妄想を綴ってみよう。
大阪ではいつも売り上げ上位を誇る人気のお店。その要因はなんといってもこのおばちゃんの販売力の賜物、なにを売らせても買わせてしまう接客のトッププロ。そんな実績を掲げて、渋谷のど真ん中『FOOD SHOW』に期間限定出店が決まる。いままでの経験を活かすべく、意気揚々と東京に乗り込む。いつもならお客さんを盛り上げ気持ちよく買い物をしていってもらうのに、ココではどうやら様子が違う。一日中、歯痒さと悔しさに苛まれていたことだろう。
東京という土地柄、接したことのないお客さん達、決してそんなのを理由にしない。自分に向けられた嘆きの言葉からは、仕事に向き合う誇り高さ、接客のプロとしての挑戦、そして一番目玉商品を安く売らなければならないという責任感が集約されているように思えてならない。体裁ばかり気にしている薄っぺらいプライドとはわけが違う。おばちゃんのプライドは、純粋で、格好良くて、高貴なものだった。
この豪華なお弁当を購入したのは言うまでもない
「まとめ。」
最初から格好良い仕事なんてどこにもない
働く人のプライドが、どんな仕事も格好良くしてしまう
コラムでも紹介した『パーフェクト・デイズ』の主人公/平山さんの職業は”トイレ掃除職員”。あのヴィム・ヴェンダース監督に「彼の生き方に憧れ、嫉妬心すら覚える」とまで言わしめた
就活真っ只中の学生たちに、この意図がちょっとでも伝わればうれしい限り
にしても、あのおばちゃんの呟きはシビれたなー
それではまた来週!
