第五十八話 富士そば

第五十八話 富士そば


読書、芸術、スポーツと、ついに秋がやってきた。

そうそう忘れちゃいけない『食欲の秋』。
秋だから、今回のお題は”食”の話にしてみよう。

あれやこれやと考えて、辿り着いたのがなぜか<富士そば>。
どんなコラムになるのやら。

それではどうぞ。



「名代富士そば。」

名代富士そば
名代は「なだい」と読み、評判が高いことを意味する言葉。「みょうだい」になると代理とか暖簾分け的な意味合いがあり、<富士そば>を特集したテレビ番組で観たことがある。

24時間営業をいち早く飲食店に取り入れたのでも有名で、首都圏にお住まいの方々には馴染み深いことだろう。俗にいう立食いそばのチェーン店。学生時代からこんな歳になるまで、どれだけお世話になっていることだろう。正直なとこ、美味しいからというわけではない。関西の人からしたら話にならないぐらい、むしろ不味いと言われても致し方ないほどだ。他にいくらでも美味しいチェーン店があるのに、なぜこれほど多くの人が<富士そば>を求めるのか。不思議だ。

明確な答えは持ち合わせてはいないが、ワタクシ道草次郎<富士そば>が大好きだ。格好つけると”都会のオアシス”であり、言い換えれば昔ながらの夜中の避難場所。真っ暗の街中にポツリと灯るあの感じがたまらない。人の気配に触れつつ、ひとりでいられるのもまた良い。

若干、着色しすぎたか。



「味の話。」

そろそろ味の話をしよう。
<富士そば>を美味しく食べるには、食べる”時間”が関係しているのをご存知だろうか。

昼間は回転率を上げるためかそばはすでに茹でてあり、ただ温めるだけの効率重視。がしかし、人もほとんどいない夜中や朝方に「今から茹でるので2~3分お待ちくださーい」と言われる時間帯があるのだ。そんな時は、買った食券の変更を打診する。冷たいもりそばなどは、はっきり違いがわかることだろう。贔屓目なしに、茹でたてのもりそばは旨い。特に、冬のキンキンに冷えた水で締められたもりそばは、見直すほどにいつもと違うそばが提供される。

その際は、かき揚げやちくわ天などお好きなものをトッピングしていただきたい。



「オススメメニュー。」

『コロッケそば』コロッケをつゆに溶かしながら食べる。
とか、立ち食いそばの王道メニューは置いといて、道草次郎の<富士そば>ちょっと斜めなオススメ3選を紹介させていただきたい。

まず外せないのが『カレーそば』。
あの定番のカレールーがかけそばの上に盛られた『カレーそば』。つゆはかなり少なめ、このバランスが絶妙で、そばにすることで絡まりも良くライスとは違ったより和風なテイストに。普通の蕎麦屋のあんかけカレーとはまったくの別物で、ぜひ七味を多めにかけて食してもらいたい。

サイドメニューの『いなり寿司』。
甘じょっぱい味付けは、そばのお供というよりも、いなりが主役の味噌汁代わりにそばを食う。これもまた絶品。

そして、最近の大ヒットが『濃厚味噌ラーメン』。
煮干しラーメンも美味しいのだが、この味噌ラーメンはひと味違う。味噌はクリーミーで濃厚、甘味のある白味噌ベースに相性抜群のコシのあるかんすい麺。代官山店限定だと思うが、店舗限定メニューが多いのもまた<富士そば>の魅力。蕎麦屋のラーメンって、なんであんなに旨いのだろう。



「まとめ。」

『素朴なのがいい。』
強いて言うなら<富士そば>にはこの言葉があてはまる。旨すぎず、不味すぎず、究極のB級グルメ。いろんなものを削りに削った末に、辿り着いたのがこのカタチ。憧れる。

<富士そば>の利益率が高いのは、FCパートナーを大事にするのがモットーだからと丹道夫会長が語っていた。お店に貼られた演歌のポスターには、”丹まさと”という作詞家の名前がやけに目につく。それもそのはず、”丹まさと”とは作詞家になる夢を実現させた会長本人なのだ。

これほどの規模の事業を一代で築き、夢まで叶えてしまうなんて、きっと人並み外れたなにかを持っているのだろう。探究心、思慮深さ、努力、運、勇気、思いやり。。。
あれあれもしかして、丹会長もグッドオールドボーイではなかろうか!

そばでもすすりながら、人生の先輩としていろいろ話を聞かせていただきたいものだ。
そんな機会を夢見つつ、今週はここまで。

やっぱり『コロッケそば』食べにいこーっと!

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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