第五十話 ご馳走

第五十話 ご馳走


サウナに入っているかのような暑い毎日、いかがお過ごしでしょうか?

『じろうの道草』も早いもので、もう五十話目。
毎週なにかをやるということが、こんなにも気持ちの良いものなのか。幼少の頃から思い返しても、続けてやったと自信を持って言えることなど一つもない。ボクは三日坊主の典型だ。

だが、このコラムだけはできるだけ続けようとボク自身も励みになる節目の回。
テーマは「おじさんは旨いもの食べている!」だ。

それではどうぞ。



「昔ながら。」

先日、取引先の社長さんからランチの誘いをいただいた。
東日本橋という場所柄、地元に根付いた美味しいお店へいつも連れて行ってくれる同い年の社長さん。江戸時代から続くお団子屋、鴨せいろがめちゃくちゃ旨い蕎麦屋など、すべてがど真ん中に突き刺さる。

ミーティング前のお昼ご飯。屋形船が多く停められている神田川方面に足を運ぶ。”昔ながら”が好きなボクを知ってか、ここの惣菜パンが美味しいとか、この喫茶店はレトロで雰囲気があるとか、とにかく興味をそそる案内をしてくれる。『地元民に愛される名店マップ(仮)』を作りたくなるほどに、創作意欲まで掻き立ててくれる。

いろんな話をしていると、今日のランチは<天麩羅>ということが告げられた。



「柳橋 大黒家。」

柳橋 大黒家
ここは、知る人ぞ知る名店中の名店。一度は行ってみたかったお店。

我らふたりに、プロジェクトの主役ー通称<シェルミ>、そこにうちのスタッフひとりの計4人。そんな豪勢なランチとはつゆ知らず、いつもの流れで連れてきたことに恐縮してしまう。

ちゃぶ台と座布団が敷かれたお座敷で、神田川を横目にお茶を飲む。ココで食べると思いきや、あくまでココは待機部屋。しばらくすると、天ぷら鍋を囲む半円型のカウンター席に通される。そうそう、これぞ<天麩羅>だ!

ジュワー しゅわしゅわ パチパチ
目の前で揚げられる天麩羅は、目にも耳にも心地良い。海老の頭から始まり、海老、キス、アナゴ、とうもろこし、なす、椎茸と、ひと品ひと品、揚げたてをいただく。旨味がギュッと凝縮され、素材の味を濃厚な味に仕立て上げる。揚げただけでこんなにも美味しくなるものなのか。職人の技ありきだろうが、日本料理の奥深さに心の中で拍手大喝采。久びさの食の刺激に言葉を失い、食材との対話に没頭する。

この美味しい時間が終わるのが名残惜しく、勢い余って<小鮎>に<みょうが>、<タマネギ>を遠慮もせず追加注文してしまった。かき揚げとご飯が出てくることをのちに知ることになのだが、わかっていれば追加しなかったのに~。社長、すいません。。。

すべてを食べ終え、お座敷に戻りスイカとお茶でランチ終了。
兎にも角にも美味しくて、最高のランチをご馳走様でした。



「滲み出るもの。」

「おじさんは旨いもの食べてる!」
まったくその通りである。おじさんは、本当の旨いものをよく知っているのだ。

値段の問題ではない。
高い値段を出せば旨いのは当たり前、期待を遥かに超えてほしくなる。逆に安価なものでも、ここでしか食べれない旨いものなら高級にはない価値がある。このバランスをよく知っているのがおじさんグルメであり、食のおもしろさではなかろうか。

柳橋 大黒家>でいただいた天麩羅。
季節によって旬の食材を最高の状態で食べさせてくれる。四季のある日本であればなおのこと。こういったお店をしっかり押さえている社長は、粋だし、洒落てるし、まさにグッドオールドボーイだ。

おじさんの格好良さって、こういう何気ないところから滲み出るものなのだと教えられた。



「まとめ。」

食に限ったことではない。
おじさんの魅力って、酸いも甘いもモノゴトの本質をよく知っているところにある。

良いものは良い、悪いものは悪い。というだけではない。
ある程度いろんなことを知ったうえで、本当に価値のあるものを見極める。良いものの中からも選別するし、悪いものの中にも価値のあるものを見出す。相手に合わせた引出しも、経験によって嗅ぎ分ける。こういうことをさりげなくこなしてしまうおじさんに、どうしても魅力を感じてしまうし自分もそうなりたいと心底思う。

こういった内面の部分の格好良さをどうしたら伝えることができるのか。
これからの<Good, Old Boy>サイト運営になんとか影響を及ぼしたいと、<天麩羅>を通じて前向きになる筆者であった!

おじさんって、イイだろぉ~

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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