第二十六話 おまかせの妙

第二十六話 おまかせの妙


人には「好み」というものがある。
与えられた環境で培われ、生活していく上で染みついてきた価値観とでも言えようか。自分を満足させるためのものなのか、それとも他を受け入れづらくしてしまっているものなのか。どちらにも転ぶ可能性を秘めている「好み」の幅を、いま一度を広げてみようの今週のコラム。

自分の「好み」はちょいと仕舞っておくれやす。



「おまかせプロジェクト。」

誰しも自分の「好み」というものは、自然に理解していることだろう。
さらに長く生きてきた者ならば、「好み」は確固たるものになり、さらには凝り固まってきているのではなかろうか。

この「好み」というものは良くも悪くも厄介なもので、自分だけのことならなんてことないが、人が関わってくると途端に豹変することがある。「好み」の押し売り、価値観の摩擦、不一致、お節介にまで発展することもある。時間をかけて厳選された良いモノゴトなはずなのに、固執しすぎると逆方面に進んでしまう。

という懸念から、最近意識してやっていることがある。自分の「好み」フィルターを取っ払い、積極的になんでも受け入れてみる行動。その名も『おまかせプロジェクト』。まずは、小さいことから変化を受け入れる姿勢が大事なんじゃないかと。



あえてのオーダー。」

ある日、レストランに行く。
大抵「好み」の1~2番候補のメニューに目が向けられ、そこから味を想像して今日の気分と照らし合わせる。マッチしたら迷わずオーダー。そうでなければ、気分で自分好みを探す。という流れではなかろうか。そうなると、洋食やさんなら、中華なら、パスタだったらと、それぞれ10回行ったなら半分は同じものを頼んでしまうボクがいる。

この現状からの脱却を試みる。最近は、日替わりやおまかせメニューを優先的に。無い場合は<今月の◯◯>みたいな期間限定メニューだったり、食べたことのないメニューに挑戦するよう心がけている。もちろん失敗することは多くなる。食べ終わった後モヤモヤすることもある。それでも自分の定番メニューじゃなく、あえてのオーダーをするのには意味がある。

外したくない概念、好みへの信頼感、食事としての満足感など、すべて棒に振るってでも得られるものはただひとつ。<発見>のためでしかない。好奇心とでも言えようか、いろんな味の魅力を知りたいという思い。かつての「好み」はひとまず置いて、いまの自分に新しい「好み」を<発見>できないか。

何度失敗しても、ひとつ見つけられたらそれは貴重で有意義なこと。今後の人生にも、まだまだ可能性を見出せる。



「お願いします。」

先日、美容師をしている副主宰の奥さんに髪を切ってもらった。
わざわざ事務所に来てもらい、どういう感じにしたいか聞かれるも『おまかせプロジェクト』実行委員のボクの答えはもちろんおまかせ。好きに切ってもらう。事細かにここがどうでみたいなことを言うつもりはない。坊主であろうが、モヒカンであろうが、どうなるかが楽しみだ。

彼女は、”イケおじ”を目指して髪を切る。若い時と違っておじさんには清潔感が必要らしく、フォーマルでもカジュアルでもスタイリングしやすいカットにしてくれた。そこに、おじさんの愛嬌が出るようなエッセンスも盛り込んでくれたとのこと。ありがたや。これも他人から見る自分の印象をカタチにしてもらえた”おまかせ効果”。新鮮である。

娘も一緒に付き添いしてくれて、ウーバーで韓国料理をオーダーし副主宰家族と夕食を共にする。こんな時間もまた楽しい。



「まとめ。」

歳を重ねると好き嫌いがはっきりしてくる。
それだけに新しいモノゴトから目を背けたり、知ること自体を諦めたり、進歩が止まりかけてる自分を感じてしまったことがコトの発端。表現者として、そうなってはならないと深く反省。

そこで思いついたのが『おまかせプロジェクト』というわけなのだ。食べ物だけでなく、当てはまるならなんでもやってみる。どんなことからも<発見>なんて見つかるもので、自分の知らなかった価値観を広げることが、これからの人生を豊かにしていくきっかけになるはずだ。

「頑固一徹」も職人っぽくて憧れはあるけど、それを押し通すメンタルを持ち合わせていない。それよりも、ひとりで<発見>を楽しんで自己満足してるぐらいが性に合っている。

十人十色。
貴方はどちらへ行かれます?


ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
この記事、如何かしら?
  • キュン (3)
  • WOW (1)
  • NEW (1)