第百六十七話 シンボル

第百六十七話 シンボル


毎週日曜日は『じろうの道草』コラムの日。

さて今週のお題は、秋のアレをきっかけにあちこち散らばるいつものパターン。

それではどうぞ。



「WAD」

すっかり肌寒くなり、いまはもう秋真っ只中。
仕事で鳴子温泉に訪れた道すがら窓の外を見ると、古民家の庭には橙色の実をつけた柿の木が映える。なんて情緒深く、なんとも美しい故郷の景色。古き良き日本の原風景に欠かせない象徴は”柿の木”が最有力候補。

バスや電車などで暇なときは、象徴(シンボル)を探す絶好のチャンス。
お弁当”といえば、ウインナー卵焼き。梅干しだと世代間ギャップを生み出してしまうので要注意。”太っている人”にはオーバーオールがよく似合う。は”卒業式”より”入学式”の方が寂しくならなくてイイ。おばあちゃんには””、おじいちゃんには””を贈呈しよう。

こんなことを考えるのにはきっかけがある。数十年前に見た海外の雑誌に載っていたある一枚の写真。
小中学生ぐらいの少年が白いバンツ一枚で、なぜかハイヒールを履いてスケートボードに乗っている。片手には銃を持って自分のアタマに突きつけ、地面には水溜まりがあちらこちらに。少年の表情がわかるかわからないかぐらいのピントがブレた強烈な写真。

想像できたでしょうか。
こんな写真が見開き2ページで使ってるなら、きっとなにかメッセージがあるはず。写真に込められたヒントを何度も何度も探り、答えが出たのは一週間後。スケボーにヒールのバランスの悪さ、パンツ一枚の無防備さ、周りの水溜りと顔のピントのはっきりしない少年の表情。まさしく『思春期特有の不安定さ』を表現していたのではないだろうか。

言葉で伝えるのも難しい題材を、写真一枚で伝えられるという衝撃。数年後この編集部の住所を辿り突撃訪問してしまったぐらい。皆さんとてもフランクで、オシャレなオフィスを隅々まで案内してくれて、帰りしなお土産までいただいたことを思い出した。雑誌を好きになったきっかけであり、クリエイティブのおもしろさも同時に教えてもらったファッション&カルチャー誌<WAD>。

こんな雑誌、作りたかったなー



「まとめ。」

柿からシンボル~<WAD>にまで発展。
いきなり洋服屋をやめて、クリエイティブの世界に飛び込んだ。良かったかどうかは置いといて、この写真に人生を変えられた。この少年はもしかしたら自分じゃないかと言わんばかり、20代後半にもなって思春期を続けていた当時のワタクシ。

いまだ大して変わっていないのかもしれない
それではまた来週!

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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