第百五十五話 サイキョーは嗅覚!
毎週日曜日は『じろうの道草』コラムの日。
さて今週は、”匂い”について話をしてみようと思う。。
それではどうぞ。
「プルースト効果。」
ある日の地下鉄駅構内。
ホームで電車を待っていると、一瞬どこにいるのかわからなくなる錯覚に陥る。記憶のタイムトリップというか、かつて訪れたことのある異国の駅が突然脳裏に浮かんでくる。キッカケは間違いなく”匂い”が原因。外国からの旅行者増加に伴い、いろんな香水が混ざり合い、まるで海外の電車に乗ったかのような独特の香りがホームに漂う。いきなり懐かしい記憶が蘇るも、目の前にある視覚とのラグにアジャストできない不思議な感覚。これはこれでおもしろい。
このような現象は『プルースト効果』と言われ、奥底に仕舞い込まれてた過去の記憶を、ある”匂い”がトリガーとなり呼び起こされるというもの。蒸気に混じった給食の匂い、小さいころ遊んだ草木の匂い、昔付き合ってた彼氏彼女の匂い、夕立のあと遊びに行った雨上がりの匂い、病院の嫌な消毒液の匂い。いつなんどき現れるかわからないから、良くも悪くも強制的に呼び起こされる。
昔ながらのかき氷のシロップは、香料以外は同じ原料で作られているというのは有名な話。鼻を摘んで食べたら味はどれも同じだっていうのだから、嗅覚は味覚まで網羅してしまうほど強力な感覚。それもそのはず、人間の持つ5つの感覚の中で忘れやすい順に記すと、聴覚 → 視覚 → 触覚 → 味覚 → 嗅覚 とされ、嗅覚はもっとも忘れにくいのだそう。江戸時代のうなぎ屋からコストコのパンコーナーまで、”匂い”を釣りに食べたくさせるという策略は、脈々と受け継がれいまなお実施されていることに納得せざる得ない。
これこそが、普遍的で最強のプロモーションなのかも知れない
「まとめ。」
3ヶ月か、半年か、はたまた年に1回か。
この『プルースト効果』が起こると、なんだか得した気分になる。なんかのアトラクションに乗ったかのように、記憶の甦りに高揚してしまう。思いもよらない突発的な出来事は、まるで過去から配達された荷物のよう。勝手にセルフタイムカプセル。
ひとり遊びもほどほどに
それではまた来週!