第七十四話 ヒトと人

第七十四話 ヒトと人


夏より冬が好きな筆者だが、最近寒くて仕方がない。
今年のせいか歳なのか、ホッカイロが欠かせない。

そんな寒さの中、人と触れ合うふたつの出来事。
それではどうぞ。



「プロローグ」

隣にどんな人が住んでいるか知らないという話をよく耳にする。また、昔みたいに近所のおじさんに怒られるといったこともほぼほぼ無くなった。
良いとか悪いとかではなく、人と人との関係が希薄になりつつある昨今。

そんな乾いた世の中で、最近立て続けに温かい出来事があった。たわいもない話だけど、気持ち良くいつもとは違うアプローチでお伝えさせていただきたい。



「外国ではあり得ない。」

荷物を運ぶため、ハイエースをレンタカーした。
前日から手分けして大きな棚や仕事道具などを詰め込んで、朝イチ取引先へいざ出発。

戻ったのは返却時間のギリギリ21時。ヘトヘトになりながら雨降る渋谷を歩いて事務所に戻る。帰った瞬間、寝落ちしてしまうありさま。翌日仕事をしようとノートパソコンを。。。あれっ、ない。。。レンタカー会社に電話して詳細を伝えると、すでにほかの人が借りてしまっているとのこと。シート後ろのちょっとしたとこにスッポリ収めたので、掃除したとき見つけられなかったようだ。焦る。。。

いま借りている人に連絡を取ってもらったが連絡つかず、折り返しがあったら連絡するとのこと。データや資料、外付けUSBなんかも入ってて、これはヤバすぎる。。。「確認してみる」と連絡が入ったのが23時少し前。お店は23時で閉まってしまうようで、ただ祈ることしかできない。もうすぐ0時、諦めかけてたそのとき携帯が鳴る。

なんとそのお客さんは、困っているだろうとわざわざレンタカー会社まで届けてくれたのだ。さらにスタッフさんも、お店を閉めることなく待っててくれたというではないか。

振り回してしまった自省の念と、ありがたさで満ち溢れさせてもらった一日だった。



「隠れ名店。」

健康のため食事を見直そうと、副主宰とともに最近やってきた”蕎麦”ブーム。
出掛けた際、近くで美味しい蕎麦を食べようと探してくれたのが食べログ『4.7』の高評価なお店。これは行かねばと、ナビで辿りついたところは閑静な住宅街のとある一軒のお宅。

半信半疑でドアを開けると、テーブルや椅子が並んでいるのでお店であることは間違いないようだ。電気はついておらず、声をかけても反応はない。しばらくして奥からおじいちゃんとおばあちゃんが出てきて、お店はやっているとのこと。老夫婦ふたりが足を引きずって出てきてくれたのだから帰るという選択肢はなかった。ボクは<牡蠣汁そば>を注文ししばらく待つことに。

ほかのお客さんもいなくて営業時間なのにお店は真っ暗。よく考えれば、このパターンでうまくいったためしがない。ところがである。出てきた蕎麦は、過去イチといってもいいほど旨い。とにかく旨い。それもそのはず、蕎麦の業界誌などに載るほどのこだわりの蕎麦屋だったのだ。直接農家と契約をして、厳選したこだわりの蕎麦の実を毎日石臼で挽いてお客さんに提供するとのこと。香り高い蕎麦が食欲を刺激する。

使っている蕎麦の実をそのまま食させていただいたり、店主のおじいちゃんと蕎麦談義に花を咲かせることとなる。丁寧に植える時期から育て方まで教えていただき、この希少な蕎麦の実をおみやげとして持たせてくれた。

まさかの展開に、心もお腹も大満足でお店をあとにすることとなった。



「まとめ。」

ヒトのご厚意にあずかり、心より感謝を申し上げたいふたつの出来事。

相手に会っても会わなくても、『ヒトと人』は繋がれることに気づかせてくれた。人が苦手とか人見知りとか、いつまでも言ってる自分が恥ずかしく思えてくる。ヒトから受けた恩をありがたく受け取り感謝をし、他人、知り合い関係なく、ちゃんと返せる人でありたいと改めて考えさせられた。

上の世代にしていただいたことを、同じように下の世代に伝えていくのも恩返し。世の中変わりつつあるけれど、まだまだ捨てたものじゃないとも思えてくる。

3月になったら、蕎麦の実を植えてみよーっと。


追記:
いろいろとお世話になりまして、ありがとうございました。

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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