第百六話 注文の妙

第百六話 注文の妙


いよいよ9月突入。
昼間は暑いものの、夜は和らぎ若干秋も感じれるようになってきた。

さて今週は、お店で何かを選ぶ際の人にまつわるいろいろなお話。
はたして、どんな”注文”になるのでしょうか。

それではどうぞ。



「注文の妙。」

人には好みというものがある。
定食屋なら”さば塩定食”もしくは”しょうが焼き”、マクドナルドでは”ダブチ””テリヤキ”、ドミノピザでは”ハワイアン”にハラペニョトッピング(←筆者本人)などなど、毎回似たようなものを無意識に頼んでいることないだろうか。あの店のいつものコレが食べたくて、まるでセリフのように何も考えずスラスラ出てくる。ほかのものだとなんか不完全燃焼で、やっぱりいつものにしておけば良かったということになりがち。水戸黄門でいうところの葵の御紋。あれなくしては話も上手くまとまらないってもんだ。

ラーメン屋に行ったら券売機の左上が店のオススメ。わかっちゃいるけど、そこは根っからの天邪鬼。とんねるずの番組企画<なのにトラン>のように、〇〇なのに敢えて違うものを選ぶ。初めていったお店でも気になる限定メニューがあれば、定番を差し置いて頼んでみる。有名店の壺焼きカレー『ビストロ喜楽亭』にいっても、カレーを頼むことは5回に1回がいいところ。ここのカキグラタンやピラフもめちゃくちゃ旨い。お決まりコースも安心感があっていいのだが、ハズレ覚悟でいろいろ挑戦してみると、意外にも主役を越える隠れたお宝が眠っていることも多々あるのだ。

たまに何人かで食事をする際に、シバリを設ける。
「注文したことないものを選ぶ」というルールのもと各々に選んでもらう。そうすることで、知らない味に出会うチャンスが生まれる。それは決して美味しくなくてもいい。発見さえあればそれだけで十分満足。こうして綴って思ったことは、なんて面倒なオジさんなのだろうということ。付き合ってくれる知人友人に感謝である。

とはいえ、だいたい選ぶものはいつも似たり寄ったり。
そんな時はお願いをして買ってきてもらうというのはいかがだろうか。例えばパン屋さん。人によってまったく違うパンチョイス。思いっきり好みが分かれる場所だから、なんのリクエストもせず買ってきてもらい袋を開けるワクワクがたまらない。甘いの、しょっぱいの、豪華なもの。そこには相手の知らなかった一面も垣間見れることもできるし、同時に自分では選ばないものが入っていてほしいという願いもある。

では誕生日プレゼントになるとどうだろう。
相手のことを想い、なにをあげたら喜んでくれるかを想像しながら選ぶのではなかろうか。それは相手にとって必要なものなのか、もしくは驚かせたいものなのか、はたまた自分ではなかなか手を出さないけど貰ったら嬉しいものなのか。目的によって選ぶものも変わってくる。逆に、相手関係なくただ自分があげたいものをあげるという選択もある。実例でいうと、スターウォーズ好きのアシスタントから誕生日にダース・モールの首振り人形をいただいたことがある。暗いと光る蛍光仕様でレアモノだと言っていた。3年後、そのままの状態で丁重にお返しした。ただ自分の好きなものをあげる勇気、このハートの強さをなにかに活かせたらスゴいことになるのではないかといまだに思うのである。

どちらが正しいということではない。



「まとめ。」

自分のために選ぶ『注文』
人のために選ぶ『注文』
なにかを選び決めることって、簡単なようでとても難しい。答えがないだけに、自分が納得するための理由探しみたいなところまで持ってかれることもある。妥協することもあるし、挑戦することだってある。それだけにアタリに辿り着けたときの喜びもひとしお。

先日、ワーホリで海外に行く甥っ子にパスポートケースをプレゼントした。コロナの影響もあって、かつて作っていたところも製造をやめてしまったという返答ばかり。35℃を越える日に朝から晩まで東京中を探しまくってやっと見つけたサイズ感バッチリのヌメ革製。これから一生使えるもので、刻んでいく経験とともに歩み、彼らしく味を出していってほしいという願いを込めて選んだつもり。
これもひとつの『注文の妙』

それではまた来週!

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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