第百四十八話 もはや〇〇。

第百四十八話 もはや〇〇。


毎週日曜日は『じろうの道草』コラムの日。

さて今週は、『もはや〇〇』なことについて話をしてみよう。

それではどうぞ。



「冷やし中華。」

先日、友人とランチをすることになり、「なに食べたい?」の質問に「冷やし中華」という返答。
『じろうの道草 第九十二話』でも綴ったとおり、冷やし中華といえばワタクシ次郎。知らない土地で、目に飛び込んできた赤いホロに白で書かれた”中華”の文字。年季の入った出立ちがこれぞ昔ながらの町中華。店の作りはカウンター7席と3畳ほどのあがりひとつの長屋仕様。無口で優しそうなお母さんと、おっとりとしているけど動きに無駄のない娘さん。どちらかひとりはせわしなくて圧のあるコンビっていうのが定石なのだが、この店はそうではないらしい。

50年以上続いてそうな、まさに昭和の中華屋さん
お父さんがお亡くなりになり、その味を奥さまと娘が引き継いで、いまなお常連さんが通う地元に愛される店。なのではなかろうかと勝手に妄想を膨らませていると、出てきた冷やし中華は誰もが想像する冷やし中華そのもの。同じ味でも、こういうところで食べれば一層美味しくなること間違いなし。カウンターで昭和の気分に浸りつつ、こうして家族一緒に店を営むことの素晴らしさを語り合い出すおじさんふたり。

昭和が終わり、平成も過ぎ去り、令和の時代。
われわれ昭和生まれの人間からしたら、慣れ親しんだこの手のお店。味がどうこうではなく、お決まりの料理を気負わず食べれる安心安定の店であって、特段レトロ気分を味わいたいわけではない。初めて訪れたこの店の感想はズバリ『もはやアミューズメント』だということ。古ぼけた手書きのメニュー、店内に貼られた日焼けしたポスター、所々はげているしゅ色のカウンターに、使い込まれた調味料入れ。長い時間をかけて自然に仕上げられた味のある空間。お客もスタッフも含め、演出ではこうはいかない本物のレトロ。そんな貴重な場所へこんな気楽に訪れることができるなんて、もしかしたらすごいことなのかもしれないという想いを噛みしめながら、ありがたく冷やし中華をすすって店をあとにした。

おしまい



「まとめ。」

もはやアミューズメント』とは、レトロ純喫茶や洋食屋、蕎麦屋などにも当てはまる。
建物の老朽化、働く人の高齢化、引継ぎ問題など理由は様々だが、昔ながらの魅力ある個人店は減少の一途を辿るばかり。少し前まではなんとも思ってなかったのに、最近では『まだ残っててくれた!』と感謝するようになってきた。

年月かけて生み出された味わいはかけがえのないものであり、一朝一夕では作ることのできない貴重なもの。何十年もののワインとかヴィンテージデニムとか以上に、唯一無二な価値あるものだと大きな声で伝えたい。

もう10年もしたら、行きたくても行けなくなるかもしれませんぜ!
それではまた来週!

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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