第百四十三話 パーフェクトデイズ。
毎週日曜日は『じろうの道草』コラムの日。
さて今週は、一度却下したけどどうしても残しておきたいし話したいから復活した映画の話。
それではどうぞ。
「平山さん。」
ヴィム・ヴェンダース / Wim Wenders という映画監督をご存知だろうか。
『都会のアリス』(74')『まわり道』(75')『さすらい』(76')のロードムービー三部作をはじめ、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』などのドキュメンタリー、お得意のロードムービー『パリ、テキサス』などで、数多くの映画賞を手にしている大好きな映画監督のひとり。
映画『パーフェクトデイズ / PERFECT DAYS』は、トイレ掃除員の平山さん(役所広司)の話。朝起きて、仕事に行って、休憩して、帰ってきて寝る。たまの休みも含め変わり映えしない彼の日常を描いているもので、正直ストーリーはこれがすべて。にも関わらず、じんわりじんわりいまだに強烈な印象を残し続ける映画。
のちのインタビューで、ヴェンダース監督は「平山さんは、我々の多くが叶えられずにいる夢を思い出させる存在。」と語る。「本当に大切なものをきちんと慈しみながら生活をしている」「平山さんは世界が必要としているとても重要なキャラクター」と、もはや崇拝の域。映画を観たあとの余韻はこういうことだったのかと、語源化されてさらに突き刺さしてくる後効きタイプ。
また、監督をドイツ人の彼に手掛けてもらったのもこの映画の素晴らしいところ。日本人が見慣れてるなんてことない日常の中に存在する、心に訴える情景や叙情を思い出させてくれる。忘れてはならないというメッセージのごとく、美しい映像で伝えてくれる。日本人より日本の良さを知っていることに嫉妬すら覚えてしまう。
こういう映画は派手じゃないし、なかなかわかりづらいのかもしれないけど、自分がどんな状況のときに観たかで受け取り方も変わってくる。また、歳を重ねてから観るのとでも捉えどころは違うはず。観る人次第で伝わり具合の異なる、味わい深い不滅な作品。
そんな映画『パーフェクトデイズ / PERFECT DAYS』は、間違いなくボクの『人生で一度は観るべき映画』の1本となった
「まとめ。」
この映画の発端は、『THE TOKYO TOILET』がきっかけ。
日本人が本当に世界の誇れるものを問い、かたちにしたプロジェクト。従来の公共のトイレのネガティブなイメージを払拭して、誰もが利用しやすく、日本の「おもてなし」文化の象徴となる施設に生まれ変わることを目指したもの。その一環として、東京都の協力のもと、ヴェンダース監督はものスゴい映画を作ってしまった。
騙されてください!
観てください!
それではまた来週!
P.S.
棟梁、退院したら一緒に観にいきましょう!