第六十二話 不思議な習慣
生活しているだけで毎日いろんなニュースを目にする。
事件事故、犯罪、失言、トラブルなど教えてくれてありがたいのだが、モヤモヤするからあまり深掘りしないようにしている。
先日ネットで羽鳥慎一アナウンサーの喋ったことがニュースになっていた。
それがきっかけで今回のお題『不思議な習慣』へ発展することに。
それではどうぞ。
「ホールインワン保険。」
「なんで(ホールインワンした人が)祝わないといけないんですか?」
先日の『モーニングショー』で、羽鳥アナが疑問を呈した。
<ホールインワン保険>というものがあるのをご存じだろうか。
ホールインワンをした際、一緒にラウンドしたメンバーに食事をご馳走したり記念品などを送るなどして自らを祝う。さらにゴルフ場に木を1本植えるなど祝い方は本人次第。番組内で石原良純さん曰く「舘(ひろし)さんがホールインワンされたときは、ティファニーのティーマークをいただきました」というエピソードも。バブル時代だったら出費は100万円を超えるとも言われていたから、そのための保険ということだ。
変でしょ!
「国民性。」
『1/33000』
この数字はホールインワンの確率。素人ゴルファーが達成するのは至難の業で、一生に一度あるかないかの奇跡的なもの。であれば、祝うより祝ってもらいたいというのが心情だろう。もちろん日本だけの暗黙の習慣。そこに保険会社が目をつけるところもまたおもしろい。ここには日本の国民性が色濃く関係していると思われる。
<真面目><気前の良さ><おもてなしの精神>
そんな日本が大好きだ!
言い換えてみると
<融通が利かない><見栄っ張り><押し付けがましい>
こうなると話は違う。
どんなことでも、良くも悪くも言えるもの。
さらにこねくり回すと、すべては表裏一体。完璧なものほどつまらないと感じるのはボクだけだろうか。ちょっとぐらい欠点があるのも愛嬌ってなもんで、”遊び”があるくらいがちょうどいい。
なんの話をしているんだか。
「団塊世代。」
世代、男女問わず、なんて不思議な習慣なのかと思うだろう。
うんうん、わかるわかる。
いまの日本を作り上げた団塊世代の人たちは、戦後なにもないところから時間を惜しんで猛烈に働き、社会を支え、経済を発展させてきた。そんな人たちの仕事の延長であり、共通の遊びのひとつがゴルフだった。
ゴルフ・麻雀・飲み(たまに女の子)。
三大おじさん遊びと言っても過言ではない。これらがすべて仕事に紐付いてるなんて、いまの若い世代からしたら信じられないことだろう。決して正当化しようとしているわけでなく、かばっているわけでもない。純粋にリスペクトしているのだ。
数ある遊びをふるいにかけて、こしにこして残ったのがこの三大おじさん遊び。取引先とのコミュニケーションを深めるには最適で、営業職であればなおさらのこと。これが人情ってなもんでメールのやり取りだけではこうはいかない。お客さんとゴルフへ行ってそのあと飲んで麻雀やって、恐ろしいぐらいの体力と気力。感服いたします。
そういった遊びの中から生まれたひとつが、このホールインワンの不思議な習慣。”男気じゃんけん”にも似た、粋なんだか悪ふざけなんだかどちらにも取れる遊びのルール。よく考えたら、ホールインワンを出してお客さんにねだってご馳走させてしまうより、ご馳走するといったほうが仕事の一環としては筋が通ってるようにも思えてくる。祝いであり、記念であり、のちのち仕事にいい影響を及ぼしてくれること間違いなし。
すべてが理にかなっているわけだ。
じきに消えて無くなるであろう習慣のひとつ。
だって仕事のためにゴルフをしている人なんて今はほとんどいないでしょ。
とはいえ確率は、1/33000。
杞憂、取り越し苦労、無駄な心配なのかもしれない。
「まとめ。」
無駄を嫌い効率を好む傾向がある昨今。
コロナの影響もあり、より加速した感は否めない。
だけどもだけど、無駄推奨派なボクとしては無駄についてちょっとだけ話しがしたい。なぜなら世界は無駄からできていると真剣に思っているからだ。発明にしても、デザインにしても、アイデアにしても、たくさんの無駄のおかげでより良いものが生み出されている。一見無駄と思えることも、これがきっかけで思わぬ産物が転がってくることもある。
このホールインワンの習慣にしてもしかり、達成することよりも話の種に会話の盛り上がりに、もしくは経済にまで多大なる影響を及ぼしてきたと想像できる。保険会社も動かしちゃったしね。こういった昔ながらの不思議な習慣は意味があるものだから、できるだけ残ってほしいと願ってしまう。
「いまの時代に合うようならば」と一応追記しておこう。
結局無駄からなにを得れるかは、本人にしか生み出せない価値なのかもしれない。
あら、無駄の話になっちゃった。
無駄になるわけじゃないから、まぁいっか!