第五十五話 LIV、どうする?
ずっと気になっていた。
ゴルフ界では話題の『LIVゴルフ』(リブゴルフ)。
まさに、激震と言っても過言ではない出来事。
今回は、この『LIVゴルフ』にまつわる話をしよう。
ゴルフを知らない人でも、ニュースとしてお読みください!
それではどうぞ。
「2つの団体。」
『LIVゴルフ』という言葉、聞いたことがあるだろうか。
昨年(2021年)新たに発足されたゴルフ組織で、かつて『PGAツアー』で活躍したグレッグ・ノーマンが代表を務める。ホワイトシャークと呼ばれ、日本にもファンが多い80年代のゴルフ界切っての超人気選手。そんな彼が立ち上げた『LIVゴルフ』は、とにかく潤沢すぎるほどの資金によって運営されている。それもそのはず、バックアップするのは原油国のサウジアラビア王家そのものであり、オイルマネーがらみの投資家たちなのだから。この発足して間もない団体がするべきことといったら、世界のトッププレーヤーたちを『LIVゴルフ』に数多く参加させるということ。ということで、世界のゴルフを牽引している『PGAツアー』選手からの引き抜きが、いま積極的に行われている。
創立1916年の『PGA』(全米プロゴルフ協会)。
その中でもツアー選手だけで構成された『PGAツアー』は、プロゴルファーの憧れでもあり、世界のトッププロ達がしのぎを削る場所。野球で言ったらメジャーリーグ以上に狭き門で、シード選手は125名(来年から70名)しかいない。世界最高峰のプロの技に、存在に、ゴルファーの心は鷲掴み。だからこそ、帝王ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッズ、ローリー・マキロイなど、歴史と伝統を受け継ぐスーパースターらは、多くの人を魅了し尊敬される存在なのだ。
まずは、この2つのゴルフ団体『LIVゴルフ』と『PGAツアー』の存在を知ってもらえれば十分。
大会方式や賞金額など、詳しく説明すると長くなるので、ひとまずこの辺りで許していただき次へ進もう。
「引き抜き問題。」
上記でも述べたように、『PGAツアー』から『LIVゴルフ』への引き抜き問題が勃発している。
真っ先に白羽の矢が放たれたのが、タイガー・ウッズへの打診だ。噂によるところ、『LIVゴルフ』への移籍に用意された額が、なんと1000億円。ただ移籍するためだけの金額。タイガー・ウッズさえ引き抜けたら勝ち確と考えたのだろう。間違いない!それほどの影響力を持ち、伝説的なプレーヤーといったら彼をおいて他ならない。しかしながら、答えはノー。
「世代間で受け継がれてきたレガシー(遺物)を守りたかったからだ」と主張。
格好良すぎるでしょ、タイガー!!
ここまでの金額ではなくとも、数百億円の移籍金を用意されたとあっては、賛同する選手があらわれるのも仕方がない。元世界王者も数名含まれ、大人気選手ばかり移籍した人数は17名。まだまだ増えそうな勢いだ。
『PGAツアー』も選手の流出の対抗策として、『LIVゴルフ』に参加した選手は『PGAツアー』資格を剥奪。今後ツアーに参加できなくなる。さらに『LIVゴルフ』と遜色ないぐらいのツアー賞金額の引き上げを発表。
『伝統』か『お金』か。
ゴルフ界はいま、岐路に立たされているのだ。
「あなたならどっち?」
ここで登場するのが、所属は『PGAツアー』の我らが松山英樹。
昨年のメジャー大会<マスターズ>アジア人初のチャンピオンを『LIVゴルフ』が放っておくわけがない。もちろん彼にも最重要人物としてオファーが届く。
移籍金400億円、、、「いや、言い値でいい!」と言われているらしく、タイガーに次ぐクラスの扱いだ。すべてが桁違いな『LIVゴルフ』。
ここで真剣に考えてみてほしい。
彼の『PGAツアー』での生涯獲得賞金はおよそ60億円。スポンサー料などは一切入れず、10年掛けて純粋に稼いだ賞金額。それを移籍するだけで400億円あげるからおいでって言われたら。。。あなたならどうしますか?
小さい頃からの夢だった『PGAツアー』て活躍するプレー資格と、伝説の選手らと肩を並べ歴史に名を刻むという名誉を捨てる代わりに400億円。なんて悩ましい、残酷な選択であろうか。
そんな松山英樹の『LIVゴルフ』に対するコメント。
「面白そうで興味はあるが、今のままでは行かない。」
「移籍のタイミングが今だとは思わない。自分のやりたいことがまだPGAツアーに多く残っている。」
と残留を発表。きっと悩みに悩んだ、いま応えうる結論だったことだろう。
『PGAツアー』と『LIVゴルフ』まだまだ続く両者の戦い。
再度質問、「あなたならどっち?」
「まとめ。」
金か名誉か。
そんな単純なものではなさそうに思える。
いまの時代、世界を席巻しているのはIT企業か投資家ばかり。昔ながらの企業はこぞって新たな道を模索し、過渡期に差し掛かっているように見える。ゴルフ界にも同じようなことが起こっており、絶対的な大組織が新興勢力に追いやられるという図式。
時代は流れていくものだからこうなるのは仕方のないことだけど、”温故知新”、敬う心をみんなが持っていてくれたら、みんながハッピーになれるんじゃないかと甘っちょろいことを綴ってしまう。
まあ稼ぐのも守るのも、みんな一生懸命だから!
(最後のひと言)
新しいものは永遠に続くけど、古いものを作り出すことはできない。
古いものを残しておくことも、かけがえのない価値になるのではなかろうか。