第四十話 藤井聡太くん、おめでとう

第四十話 藤井聡太くん、おめでとう


2022年5月24日。
藤井聡太くんが、見事、叡王初防衛を果たした。
将棋を知らない人でも、藤井聡太という名前は知っていることだろう。

今回は、藤井くんの凄さも語りつつ、将棋の話をしようと思う。
諦めずに、最後まで読んでほしい。



「ボクと将棋。」

小学生のころ、児童館によく将棋を指しに行っていた。
ものすごい強い同級生がいて、なんでそんなに先が読めるのか不思議で仕方がなかった。父や兄ともたまに将棋を指したり、テレビの将棋番組を観たりと、なにかと生活に溶け込んだものだった。いまだに実家に行くと何時間も続けで将棋をしたりもするとは、「三つ子の魂百まで」そのままを体現していることになる。

大人になってよく聞かれる会話で「誰に会ってみたい?」という質問に、ボクは必ず「羽生善治」と言っていた。お会いしていろいろ話を聞いてみたいと今でも願っている。羽生さんを好きになったのは、”ひふみん”こと加藤一二三との対局に衝撃を受けたことがきっかけだった。YouTubeに上がっていたので気になる人は、是非みてみてほしい。
加藤一二三 VS 羽生善治
こちらは、1988年「NHK杯」準々決勝。前局では昭和の大名人・大山康晴を破り、続けて”ひふみん”、谷川浩司、中原誠と当時現役の4人の名人に連勝し、優勝した羽生さんは若干18歳。”ひふみん”との対局で指された<5二銀>。好きな人からしたら共通言語とも言えるこの妙手に、驚きと震えで思わず叫んだのをはっきり覚えている。
[ <5二銀> 動画内 12分30秒あたり ]

天才少年羽生善治は、翌年、竜王のタイトルを取り、1996年(26歳)に当時のすべてのタイトル7冠を独占する活躍をみせるのである。将棋界のスーパースターは、のちに国民栄誉賞まで受賞するほどで、嗜んでいるものなら憧れでしかない。

ここらでひと段落しておこう。



「叡王 藤井聡太。」

10代から活躍を見せた羽生善治。
時代が変わり、当時と同じかそれ以上の活躍をみせるのが、みなさまご存じ藤井聡太くんなのだ。彼は、羽生さんが築き上げてきた最年少記録をことごとく塗り替えている真っ最中。今が歴史的な瞬間そのものであり、令和の天才が誕生したのだ。誕生繋がりで、偶然にも誕生日がボクと一緒。年下だけど、なんと光栄なことだろう。

どれだけすごいことを成し遂げているのかをお伝えするため、まずは将棋の全タイトルをご覧いただこう。

名人 (1935年~)
王将 (1951年~) ○
王位 (1960年~) ○
棋聖 (1962年~) ○
棋王 (1975年~)
王座 (1983年~)
竜王 (1988年~) ○
叡王 (2017年~) ○

先日、防衛を果たしたのが、一番新しいタイトルの叡王(えいおう)。
ただ、いまの藤井くんの持っているタイトルはこれだけではない。王将王位棋聖竜王の全5冠。先日、王座への挑戦をかけたトーナメントで負けてしまったので、今年中にすべてのタイトルとまではいかないが、19歳にして既に5つも取っている。

羽生さんが成し遂げたすべてのタイトル(現在は8冠)を取ることを目指し、よくニュースなどで流れてくる情報は、藤井聡太の歴史的快挙までの過程なのだ。

この叡王戦。5年前に新しく誕生したもので、スポンサーのひとつに<不二家>があり、対局中、不二家のお菓子がおやつに用意される。これは新しい試みで、おじさん棋士も持ち帰ってしまうほどの大人気。この『叡王戦限定お菓子BOX』も注目を集めているのだ。



「没頭。」

将棋を指す。
囲碁を打つ。
<指す>と<打つ>との違いは、将棋は駒を動かし(指す)、囲碁は碁を置く(打つ)。また将棋の主役は<駒>であり、囲碁の主役は<盤>というところから言い方に違いが出てきたのであろうと、テレビの受け売りを綴ってみる。

ちょっとした雑学も入れつつ。将棋を指しているときは、普段の嫌なことなど一切忘れて没頭できる。終わったあとはどっと疲れるけど、ほかにはない貴重な時間。

休日、公園などで将棋を指しているおじさんなどがいると、人が集まり覗き込んでいるあの光景を目に浮かぶことができるだろうか。先日ひとりで公園に行ったとき、アイスコーヒー片手に観戦させてもらった。もはや無くなりそうな風景ではあるが、こういうコトこそ残ってほしい。



「まとめ。」

本当は、まだまだ語り足りない。
大山名人や”ひふみん”、藤井くんの話もいっぱいあるし、ここに出てこなかった米長先生や渡辺明、将棋自体の説明まで含めると、それぞれで1話できてしまうくらいだけど、読んでくれている人に呆れられること間違いないので、ここらへんでお開きということに。


改めまして、藤井聡太くん、叡王防衛おめでとうございます。
これからも、キレのある粘り強い将棋を楽しみにしております。
道草次郎

ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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