デリアン・クロード /   Derrien Claude
ボクのヒト
#015
『あらゆる人達とこの
カフェを分かち合うこと...』

デリアン・クロード /
Derrien Claude

Q. 年齢
74歳
Q. 職業
カフェ「Le Verre à Pied 」
オーナー
Q. 必需品
ワインオープナー
眼鏡?帽子?時計?
アクセサリーは何もないよ。
僕にはこれがあればいい。

どんな大人になりたい?

ヒューマニスト。

もし魔法が使えたらどうする?

ロワール地方に美しいお城を持つってことかな。
タイムスリップで20代に戻りたいかって? いや、それはないね。遡っても40代かな。

タイムスリップできるなら、どの時代へ、何をする?

ローマ帝国の初代皇帝だったオーギュスト(アウグストゥス)の時代だね。ローマ時代の上層階級だよ。そこでミュージシャンかな? なんだろう? アーティストかな。絵描がいいね。

あなたにとって女性ってどんな存在?

トレビアン…….。称賛。欲望。

最近、感動した出来事は?

ウクライナのことだよ。戦争なんて...
この時代にヨーロッパで戦争が起こるなんて、なんて悲惨なんだ。
僕が生まれてから戦争を知らなかったということは、どれだけ運がよかったことか…….。

休日の過ごし方?

店が月曜休みだから、休日といえば月曜だね。
月曜の午前中はアート鑑賞が多い。「ルーヴル美術館の友の会」の会員だから、列に並ばなくとも入館できるからルーヴルへ行くことが多いんだよ。バカンス? あまりないけど……。
昨年はコロナ禍にあってバカンスは諦めたんだ。山が多いかな。山歩きをするんだよ。その前はイタリアのアルプスを歩いたね。(Q:だから健康なんですね !?)A:そう思いたいね。

いまの悩みは?

いつの日か店を閉めることだね。長くともあと2,3年後かな。
悩みということではないけれども、考えないといけないことなんだ。

自分の中の強みって何?

許容範囲の広さ。

好きな言葉は?

ボーテ。
ヴィジュアルも含め、魂など『ボーテ』という言葉がもたらすものは多い。

好きな映画は?

ヴィスコンティの『山猫』。

あなたの一曲は?

チャイコフスキー。
ロマンチックで素晴らしい曲を作ったよね。
クラシック以外だとビートルズも好きだよ。だからチャイコフスキーとビートルズだ。

100万円もらえたら何に使う?

決して大きな額ではないけれども、小さくもない。
イタリアのローマで2、3ヶ月滞在するというのがいいな。
観光客としての滞在ではなく、生活したいね。
子供のころ初めて訪れてからローマが大好きで、よく行くんだよ。
建築や教会を鑑賞するよ。結局、これもローマ時代への憧れだろうね。

最後の晩餐に何食べる?

生牡蠣とシャンパーニュ。

あなたの誇れることはなに?

3人の子供。
この店??この店には満足しているよ。でも、誇りという意味合いとは違うのかな。

あなたが思う、GOB(Good Old Boy)とは?

あらゆる人達とこのカフェを分かち合うこと。
そこには知識人もいれば労働者もいるし、通りがかりの観光客と交流する…..。それは日常的なことであるんだ。カフェの時間を一緒に分かち合う人たちみんながGOBと言えるだろうね。

編集後記

私自身 "パリのカフェ文化" が何よりも好きで、毎日のようにカフェに行く。フランス語なんてちゃんと勉強したこともないし、全く自慢できないような劣等生だけれど、フランス人は母国語を話す外国人に対して優しいから『上手だね』と言われるたび『カフェのカウンターで覚えました』と答える。嘘でも冗談でもなく本当のこと。

ローマ遺跡が残るパリで最も古い地区の一つ、『カルシェラタンのムフタール通り』といえば、その昔から栄える市場通り。石畳が続くなだらかな坂道の両側には、お店やレストランがひしめき合い、歩いているだけでも楽しい。日曜日になると、ミュージシャン達がが集まり、教会の広場ではシャンソンを流しながらダンスを踊る老夫婦などの姿も見られるなど...なんとも素敵な地区。そんな『ムフタール通り』に、地元の住民が集うノスタルジーな雰囲気のカフェがある。

私がこの地区に引っ越したばかりのころ、近辺を散策をしていて見つけたこのお店。
カウンターでロゼワインを飲みながら店内を観察していると、昼から立ち飲みをしている GOBがたくさんいる。何より惹きつけられたのが、シルバーグレーの髪が上品で、少年のような笑顔が素敵なムッシュー・クロードこの人だ。

小さな店内を動き回り、ドリンクをサーブしながら常連客とのコミュニケーションも欠かさない74歳。奥さんが作る料理もこの店の看板で『おしどり夫婦』として知られている。

そんなクロードに、奥さんとの馴れ初めを聞いてみると、、
「当時、カジノ・ド・パリの裏にある劇場で働いていてね。オランダ人観光客のガイドをしていた彼女が、ツアーグループを引き連れてスペクタルを見にきたんだ。その時に僕が一目惚れしたのかな(笑)…….」。

大きな目をキョロキョロさせながら、店内の客に気配りをする愛らしい表情のクロード。『また明日も来よう!』誰もが自然にそう思えるのは、そんな彼の人間力なのだろう。
ミスター・アウル イメージ

パリのヒト

撮影:吉田タイスケ
写真家、フランス在住。ライフスタイルを中心に、主にエディトリアル 分野で活動中。
犬猫と現代アートが好き。著書に吉田パンダ名義で「いぬパリ」 (CCC メディアハウス)。 長年住んだパリを離れ、三年前からノルマンディー地方で田舎暮らしを始めている。
趣味はキャンプとピアノ。愛車はフォルクスワーゲンT3ヴァナゴン1986。


編集:横島朋子
パリ在住ジャーナリスト&コーディネーター
ガイドブック、ファッション雑誌、タレント本、TVなど多岐に渡り活動。

Instagram
@tomokoyokoshima
@presse_parisienne
ミスター・アウル イメージ


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ボクのヒト

																		  歳を重ねないと、出せない格好良さがある。
																		  シブさ、洒落っけ、奥深さ。
																		  まるで珈琲のようだけど、どう生きてきたかをあらわす無二の表情。
																		 『ボクのヒト』は、人生の物語りなのである!