第二十九話 気ままな道しるべ。
ボクは、副主宰とよくご飯を食べに行く。
先日、このラーメン大好き副主宰に連れていってもらったときの出来事がお題。ふたりとも、その場の流れを大事にする性分だからこその過ごした気ままな時間。
気ままにいってみよう。
「赤坂の夜。」
「美味しいラーメン屋さんどっかない?」
マンボーの影響でラストオーダー19:30/閉店20:00のお店が多いこともあり、そんなに遠くへはいけない条件付き。副主宰はアタマの中の膨大なラーメン情報から、赤坂にあるのどぐろ出汁のラーメンを選出。赤坂でのどぐろ、響きだけでも十分なご馳走。早速、向かうことに。
裏路地の安い駐車場を見つけ、目的のお店へ足ばやに向かう。ところが、途中に新しいラーメン屋さんの看板を目にしてしまう。<貝 x 牛骨>出汁が特徴の神戸発の赤坂店。<貝 x 牛骨>というあまり聞いたことのない組み合わせ、さらに副主宰も食べたことがないという理由から、あっさりこちらに方向転換。
結果、とても美味しかった。
「生きている珈琲。」
やっと寒さも和らいで食後の赤坂をぷらぷら歩くのは、ただただ気持ちがいいばかり。
そんな中、またしても目を奪われることに。『生きている珈琲』と書かれた看板に、好奇心を射抜かれる。お腹も、気分も、満足感で溢れていたこともあり、「奢るから、コーヒー飲んでいこうよ!」という副主宰からのお誘い。もちろんお言葉に甘えることに。
階段を降りると、隠れ家的な時代を感じる喫茶店。ウッド調のテーブルや椅子、飾られた絵画やコーヒー豆入れ瓶など、温かみ溢れる大人の空間。20時ギリギリだったこともあり、お客さんはボクらだけ。いっぱいだけ飲ませてほしいとマスターに頼むと、快く迎えてくれた。
大人なのに、ちょっと大人になった気分。
「ファンシー。」
数ある種類の珈琲から、選んだのは<グアテマラ ファンシー>。ファンシーな世界に誘なってくれそうだったから、即決で注文。
ところがである。野暮な話になってしまうが、値段を見たところ一番安くて[ ¥1,500 ]。このファンシーは[ ¥1,700 ]。のちに調べたところ、こだわりの高級珈琲店で有名な老舗だった。奢ってくれるとは言われたものの、2杯で4千円近く払わせるのも心許ないと思ったが、さすがの副主宰。
「うまい珈琲を楽しみましょ~よ!」と心配を一蹴。丁寧にミルをし、お湯を注いでドリップする所作さえ美しい。
いつもの珈琲よりしっかり味わい、素敵な時間を過ごさせてもらった。”コーヒー”という文字も、”珈琲”と漢字にしてしまうぐらい、ある意味レトロなファンシー気分。
なんとなくわかってもらえるかな。
「まとめ。」
ラーメン出汁に感動を覚え、上質な珈琲タイムに心満たされる。
その時その場の偶然の引き合わせを、流れにまかせて受け入れる。予定調和じゃないから、新しい発見がおもしろい。行き当たりばったりが苦手な人もいるとは思うが、ボクは是非とも歓迎したい過ごし方。
ヒントはそこらじゅうに落ちていて、拾うか見逃すかは自分次第。よくある”虫の知らせ”なんていうのも、ヒントの一種といえるだろう。といろいろ考えさせられた、ある日の晩飯エピソード。
なんとなく締めたところで、今週はここらでおしまい。