第六十四話 へ〜
相変わらずの事務所生活。
行動範囲といったら打ち合わせで出掛けるか、近所のお店にちょいちょい程度。
そんな狭い中でも発見はあるものだ。
今回のお題は「へ~」って感心した最近の話。
それではどうぞ。
「SAVE FOOD。」
最近、知り合いの飲食店で残ったご飯をいただくことがある。
白米(玄米)などサランラップに巻かれたクッションぐらいの塊で、生まれたての赤ちゃんぐらいはあるだろう。合わせておかずなどもいただき、ひきこもりおじさんには本当にありがたいお裾分け。一食分に分けてラップに巻いて冷凍庫にストックしておけば、いつでも食べれる正義の味方。まさにフードロス、『SAVE FOOD』の恩恵に与らせていただいている。
この『SAVE FOOD』という言葉。
みんな大好きスターバックスで見たのが最初の出合い。閉店時間近い食品ガラスケースに『SAVE FOOD』という見たことないパネルが飾られ、いまなら20%OFFになるというもの。<20%OFF><30%プライスダウン><半額セール>など直接的な表記だといかにも余りものです感が漂う。『SAVE FOOD』と言われると、買うだけでなんか良いことをした気分になるのが不思議。しっかり社会問題と向き合いながら取り組み方が洒落てるのはさすが外資系。
ちょっと調べた食品廃棄問題の豆知識。
食べ残し、売れ残り、賞味期限切れで捨ててしまう食品廃棄の量は1年間で612万トン。東京ドーム5杯分と言われてもなかなかピンとはこないけど、具体的にあのでっかい球場の床から天井までびっしり埋めるとなると相当な量になることぐらいは想像できた。それがたった365日で5杯分。トラックで運んだら何台必要なことか、いろんな想像をはるかに越える訳のわからない量。
「おかず。」
白米に話を戻して、冷凍したご飯のおかずは何にするか。
早速おかず探しの旅に出る。<ふりかけ>コーナーではのりたまや味道楽など何種類も大人買い。<缶詰>コーナーからはサバ水煮やいわし蒲焼、牛肉大和煮。<瓶詰め>エリアでは何年振りかのご飯ですよ!になめ茸と、気になるものを片っ端にカゴに納める。しば漬け、ひじき煮、うの花に梅干し、これだけあれば最高のご馳走が約束される。
「レンジ調理対応。」
数々の白米のお供たち。
ところが夜中どうしてもハヤシライスが食べたくなった。そもそもハヤシライスのあるお店もそんなにないし、とっくに閉まっている時間帯。で、思い出したのがコンビニのレトルト。カレーは何種類もあるのは知ってたけど、ハヤシとなるといかがなものか。見つけたときは心の中で両手を上げてガッツポーズ、上っ面は冷静を装う。ケトルに入れて湯煎するか、ご飯を解凍したのち上に掛けて再度レンチンするか。そんな調理工程を考えること自体が無駄だった。
このハウス食品<咖喱屋ハヤシ>は、レンジ調理対応レトルト仕様。箱を開けてパウチをそのままレンチンするだけ、蒸気は出るのに中身は出ない破裂する心配もなく熱々に仕上がる。なんて便利なんでしょう。
もしかして一般常識なのかもしれない。主婦からしたらなにを今更と笑われそうな気もする。
そうそうコンビーフのあのクルクルする鍵みたいなやつ、もう付いてないって知ってた?
「まとめ。」
こんなにも消費者に寄り添い、より便利で安いものが生まれてくる国はほかに類を見ない。
もちろんビジネスなので売上のためかもしれないけど、使う人のことを思い、相手の気持ちになって取り組む姿勢を伺うことができる。売上の向こう側にある、開発者のおもてなしにも似た優しくて繊細、奥ゆかしさすら感じてしまう。
売上至上主義では思いもつかない一見やりすぎぐらいの過保護な挑戦が、モノを進化させて人を動かす。道草コラム<第六十三話 銭湯>でも綴ったが、無駄と思ったらそこでストップ。無駄こそ新しい扉をひらくきっかけになるのではなかろうか。
二週続けて、懲りずに無駄の大切さを語る無駄な試み。
あしからず。