第六話 いま、なにやってんだろう? 其の壱

第六話 いま、なにやってんだろう? 其の壱

iPhone13が発売された。

ボクが使っているのは、iPhone10 Pro Max。
2、3年前のものだけど、いまのところまったく不便はない。しかしながら、こういう職柄もあってか、カメラ機能だけはあげておいたほうがいいかなとも感じている。

そんなこんなで、過去の写真フォルダーを見ていたら、ふと目に止まったある人物の写真。
そこから、第六話のお題『いま、なにやってんだろう?』を思いついた。

はじまりはじまり。



「気ままにもほどがある」

ボクは、ひとり。
5年間のアメリカ滞在を終えて、ヨーロッパ経由で日本帰国を試みる。

まずはロンドンに入り、2週間後のロンドン発の飛行機のチケットを取る。その間は、自由気ままなひとり旅。2週間後、ロンドンに帰って来れればどこにだって行けちゃう夢のような時間。

まずはロンドン<アールズコート駅>近くの宿を1泊 20ポンドで見つけ、数日間過ごす。シャワーもトイレも共同で、ベッドで寝るとダニに喰われて寝れたもんじゃない。テレビは天井からぶら下がり、3畳ぐらいの牢獄のようだけど、映画に出てくるワンシーンのようで、これはこれで嫌いじゃない。

その後、ユーロスターでパリへ。
東京から大阪へいくように、高速列車を降りたらあっさりパリに到着。
『華の都パリ』。ファッションをかじっていたボクにとって、憧れの街。。。のはずだった。

当時のボクは、なにも刺激を受けなかった。いや、受けることができなかったと言ったほうがいいだろう。大人になって仕事でパリを訪れるようになったら、回数を重ねるほどに魅了されていくのだから、なんとも奥深いパリの街。ボク自身が未熟だったのだろう。

話を戻そう。街を歩き回って数日、パリはホテル代も高いので、1泊浮かせるためにも寝台列車でどこかへいけないか調べたところ、「そうだ、ベネチアへいこう(CM風)」と思いつきで決めた。

ここで、ある人物と出逢うのである。



「25年前のパリ 北駅」

ホテルのチェックアウトを終え、列車の出発まで時間を潰し、日暮れ近くか<パリ 北駅>に到着する。この駅からは、国内外いろんな街へ行けることもあって、結構複雑。フランス語もなに言ってるのかわからなかったけど、なんとかホームの待合場所にたどり着く。

出発まで、まだまだある。煙草でもすって時間つぶし。
ぷか~としてたら、なんか目線を感じ見回すと、アジア人の男の子が目に入ってくる。

彼はバックパッカー。
大きなリュックを傍に、フランスパンをかじり、大きな水のペットボトルを抱えながらボクを見ている。同じアジア人でも、なんとなく国籍はわかるもので、日本人だとなんとなく思った。ボクも久しぶりに会話をしたかったのか、話しかけるとやはり日本人で、彼も卒業旅行でひとり旅をしているのだという。

ただ、ほかの観光客と違い、彼は大問題に直面しているのだった。スリにあってお金を一銭も持っていないというのだ。

今もいるけど、当時はジプシーと呼ばれる”スリ集団”があっちこっちにいて、被害に遭う日本人が多発していた。彼もそのひとりなのだろう。数日後に、シティーバンクのカードが再発行されるらしく、それまではこの残り少ないパンと水で過ごすとのこと。すごいのが、彼はそんな落ち込んでおらず、「イイ経験だ!」なんてぬかすのだ。

そんな境遇なのに、お金貸してとか一切言わず、むしろ楽しんでる感を出してくる。
3月のまだ寒い時期、あちこちにジプシーがいて、野宿確定のこの知らない旅行者に、煙草2箱と100フラン(当時 ¥2,000ぐらい)を勝手に渡して、ボクは列車に乗り込んだ。

それから、彼とは会っていない。



「それからどした!?」

ベネチア以降の話は、本題とはズレるので割愛する。
その後、どこでなにがあったかは、機会があれば話をしよう。



「まとめ。」

バックパッカーの彼との出逢いを、25年ぶり思い出した。
頼もしいというか、生命力があるというか、ボクにはないものを彼から感じた出来事だった。
年の頃もそんなにかわらない同世代、彼はきっとGood Old Boyになっていることだろう。

一緒に煙草をすって共にした10分。
その後の数日間、彼がどう過ごしたのか聞きたいものだ。

追記
次回、『じろうの道草』第七話
『いま、なにやってんだろう? 其の弐』では、また別のヒトの話をしよう。


ボクの話

道草次郎 物書き
執筆活動を中心に、ディレクションからモノづくりなどにも取り組むマルチプレーヤー。
本サイト内『じろうの道草』で、コラムも担当する。
素性は如何に。
ミスター・アウル
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